・LOVER—いつもあなたの腕の中—
10
「おっと! 危ないなぁ、気をつけろよ」
角を曲がり、ぶつかったのは裕隆さんだった。オールバックヘアにスーツを身に纏った隆好の身代わり姿ではなく、今日は初めて見る私服姿。
真っ白なTシャツにライダースジャケットを羽織り、なんだか初めて会う人みたいだ。
「裕隆さん、どうして。今日は隆好が出社しているのに」
そう訊ねた私に「親父、社長に会いに来たんだよ」と落ち着いた口調で裕隆さんは答えた。
どうやら彼にとって今日が社長と話をする大切な日だったようだ。
「ちゃんと自分の気持ちをぶつけてみようと思う」
「そうですか。いい結果になること、祈ってます」
「ホントかよ。アンタにとっては厄介な事案が増えるだけだと思うけどな」
確かにそうなんだろうけど。思いがけず、口から出た言葉は違っていた。
「そんなことないです。その時はその時です。私に出来ることがあれば何でもします」
両手で拳を作り、やる気を見せた私を前に。裕隆さんは口角を上げ、含み笑いをして「へぇ。隆好がアンタに堕ちたわけだ」と口にした。
ん? それって、どういうこと?
角を曲がり、ぶつかったのは裕隆さんだった。オールバックヘアにスーツを身に纏った隆好の身代わり姿ではなく、今日は初めて見る私服姿。
真っ白なTシャツにライダースジャケットを羽織り、なんだか初めて会う人みたいだ。
「裕隆さん、どうして。今日は隆好が出社しているのに」
そう訊ねた私に「親父、社長に会いに来たんだよ」と落ち着いた口調で裕隆さんは答えた。
どうやら彼にとって今日が社長と話をする大切な日だったようだ。
「ちゃんと自分の気持ちをぶつけてみようと思う」
「そうですか。いい結果になること、祈ってます」
「ホントかよ。アンタにとっては厄介な事案が増えるだけだと思うけどな」
確かにそうなんだろうけど。思いがけず、口から出た言葉は違っていた。
「そんなことないです。その時はその時です。私に出来ることがあれば何でもします」
両手で拳を作り、やる気を見せた私を前に。裕隆さんは口角を上げ、含み笑いをして「へぇ。隆好がアンタに堕ちたわけだ」と口にした。
ん? それって、どういうこと?