・LOVER—いつもあなたの腕の中—
 本気なんだ。隆好は本気で裕隆さんに会社を譲るつもりなんだ。
 でも。会社と副社長の座がイコールなのは分かるけど。


 どうして、そこに私が出てくるの?


 キョトンとしている私に気付いた裕隆さんが、呆れた顔で隆好に告げた。


「コイツまで共有しようなんて思ってないから安心しろよ。誰がそんな間抜けな女を相手にするか。こっちから願い下げだ」


 などと憎まれ口を叩いた裕隆さんは「せいぜい大事にしろよ。お前の身勝手なワガママに付き合えるのは、コイツくらいだぞ」と捨て台詞を吐き、背を向け。
 私達を置き去りにし、その場からいなくなってしまった。


「……なに今の。私、バカにされたの? けなされたの?」

「いや。アイツなりに褒めたつもりなんだよ。優羽に惚れてたから、わざと自分から離れたんだろ」

「あ、そうなの? ん? はぁ? なんで?」


 やっぱり私は裕隆さんの言う通り、間抜けな女だ。一部始終に立ち会っていたくせに、なに一つ分かっていなかったみたい。


 隆好が私と出逢ってから。どうやら裕隆さんの前でも、隆好は私のことばかり話していたらしく。
 そんな隆好の話を聞いているうちに、顔も見たことが無い私のことをすっかり知っている気になってしまった裕隆さんは。
 実際に隆好の身代わりとして社内で私と会った際、既に初対面だとは思えないくらい身近に感じてしまったのだろうと教えてくれた。
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