・LOVER—いつもあなたの腕の中—
「ん? あ!」
顔を上げると、座っている椅子の左側には副社長が立っていた。
いつからそこに居たのだろう、全く気付かなかったなんて。副社長が気配を消していたのか、単に私が気づかなかっただけなのか。
どちらにせよ、突然の副社長の登場に慌ててデスクの下で脱ぎ捨てていたパンプスを足で探し当て、気づかれないように履く。
「まだ残っていたのか? もうすぐ八時過ぎるぞ」
「え? あぁ、ホントだ! もう終わったので帰ります」
副社長に教えられ、腕時計を確認した私は思った以上に仕事に集中していたようだ。後は明日でも間に合いそうな用件だから、とパソコンの電源を落とす。
そんな私を見ていた副社長が「今日は悪かったな」とポツリと呟いた。
「副社長?」
「会議中、君には居心地の悪い思いをさせて申し訳なかった」
どうやら副社長は昼間わたしに注意したことを気にしていたらしい。
謝る必要などないのに。悪いのは私だし、副社長が指摘した通り本当に話を聞いていなかったのだから。
「いえ、大丈夫です。気にしていません」
「ならいいが。……今やっていた仕事は、深山の仕事じゃないのか?」
電源を落としたパソコン画面を指さし、副社長に尋ねられた。
顔を上げると、座っている椅子の左側には副社長が立っていた。
いつからそこに居たのだろう、全く気付かなかったなんて。副社長が気配を消していたのか、単に私が気づかなかっただけなのか。
どちらにせよ、突然の副社長の登場に慌ててデスクの下で脱ぎ捨てていたパンプスを足で探し当て、気づかれないように履く。
「まだ残っていたのか? もうすぐ八時過ぎるぞ」
「え? あぁ、ホントだ! もう終わったので帰ります」
副社長に教えられ、腕時計を確認した私は思った以上に仕事に集中していたようだ。後は明日でも間に合いそうな用件だから、とパソコンの電源を落とす。
そんな私を見ていた副社長が「今日は悪かったな」とポツリと呟いた。
「副社長?」
「会議中、君には居心地の悪い思いをさせて申し訳なかった」
どうやら副社長は昼間わたしに注意したことを気にしていたらしい。
謝る必要などないのに。悪いのは私だし、副社長が指摘した通り本当に話を聞いていなかったのだから。
「いえ、大丈夫です。気にしていません」
「ならいいが。……今やっていた仕事は、深山の仕事じゃないのか?」
電源を落としたパソコン画面を指さし、副社長に尋ねられた。