・LOVER—いつもあなたの腕の中—
「はい。電話に出る前に名前がディスプレイ表示されたので」

『……ブッ、マジかよ。もしかして電話帳に俺の名前そのまま登録してるの?』

「はい、どうしてですか?」


 ダメなの? あれ? なんかウケて笑われてるみたいだけど、普通だよね?


『誰かに見られたらどうするんだよ』


 特に問題ないよね? だって、先日から我が社のイメージキャラクターになっているわけだし。契約を交わした事務所の所属タレントさんだし……。


「あぁ! そういうことですか⁈」


 そうか。西田リュウは俳優で芸能人だ。事務所に無断でわたしが個人的な連絡先を知っているのはおかしい、ということか。
 もしも誰かに覗かれても特定できない名前で登録しておくべきだったのか。深く考えずに、そのまま入れちゃってたわ……。


「ごめんなさい、後で変更しておきます」

『いや、いいよ。そのままで』

「すぐに変更できますよ? なんなら今しますけど」

『そのままがいい。変えないで』

「? 西田さんが構わないというのなら、そのままにしますが……。今日の打ち合わせに変更か何かの連絡ですか?」


 とはいっても、変更が生じたのならマネージャーさんが連絡してくるよね。いったい何の用があるのだろうか。

< 56 / 253 >

この作品をシェア

pagetop