笑顔の続きをまた見せて!
12話 ふたりだけの星空
【12-1】
翌日から、入院中の私は手術に向けた検査が始まった。
他に何か病気にかかっていないか、血液検査もあったし、もちろん心電図、エコー、CT、MRIも受けた。
これまでにも同じような術前検査は受けてきたけれど、今回はとても気持ちが落ち着いていた。
これまでと一番違う、ヒロくんの存在はすごく大きかった。平日はお仕事中でいられないことは最初から分かっていたけれど、その代わりに、私の看護を担当してくれている瑠璃さんがずっと一緒にいてくれた。瑠璃さんだって、看護を担当しているのは私一人だけじゃないはず。
だから、私が検査室に入っているときに他の落ち着いている患者さんのところを回診して、私のところに戻ってきてくれている。本当にお部屋の先輩方が話してくれる噂どおりの看護師さんだった。
「他の患者さん、瑠璃さん来なくて怒ってませんか?」
「大丈夫です。今は美穂さんを中心にして構わないと看護師長からも言われてますので」
そんな私たちはすぐに打ち解けて、いつの間にか下の名前で呼びあう仲になっていた。
瑠璃さんが看護師になって3年目なんだと聞いて驚いた。もっと長い経歴なのかと思えるくらい手つきも慣れているし、私たち患者への対応もこれまで経験したことがないくらい丁寧だったから、本当にベテランの方なのかと思ったけれど、そうすると年齢的におかしくなってしまう。
きっとこの仕事が瑠璃さんにとっての天職なんだろうと思った。
「これでもまだまだ駆け出しなんですよ」
「そうは見えないです」
いろんな検査も、いくつも続けていくと疲れてしまう。
夕食を食べたあと、本当はヒロくんが来てくれるのを待っているはずだった。
でも、すごく眠くなってしまって、瑠璃さんに着替えの袋の場所をお願いしておいた。それにヒロくんが来たら起こして欲しいともお願いをして。
気がつくと、もう消灯の時間はとっくに過ぎてしまっていた。
窓際のテーブルの上には、私の洗濯物がきれいにたたまれて袋に入っている。
私は手洗いに行くついでにと、病室を抜け出してナースステーションに行った。
「瑠璃さん!」
確か、今日は宿直だと言っていたからだ。
夜間当直ではないから夜は休めるけど急患が入れば対応しなければならないし、明日も夕方までお仕事だという。本当に激務なのに、どうしたらあんなに優しい顔をしていられるんだろう。
「美穂さん、起きられたんですね」
「じゃなくて、ヒロくん来たんですよね? 起こしてもらう約束だったのに」
「ごめんなさい。小田さんがこんなに気持ち良さそうに寝息をたてているから、起こさなくていいと言われて。その代わり、明日は早く上がってこられると伝言を受けてます」
「もぉ、瑠璃さんどっちの味方なんですかぁ?」
もちろんここは病院。これは眠ってしまった私が悪いのだし、それをそっとしておこうと言ってくれたヒロくんと、睡眠中を起こさないようにという瑠璃さんの判断が絶対に正しいのだけど。
「小田さん残念そうでしたけど、遅くなったご自分が悪いのだからと言われまして。今日は検査がたくさんあったので疲れたんだろうと言っておられました」
でも、ちゃんと明日も来てくれると瑠璃さんに伝言をしてくれたことは本当に嬉しかった。呆れられてしまうかもと焦ったほどだったのに。
「明日は、私も夕方には上がってしまいますから、面会のお時間までゆっくりお話しされていてください」
やっぱりこの人はちゃんと分かっていてくれている。きっとヒロくんを帰すかどうか迷ったのだろう。
それでも、私の体を最優先してくれて、ガッカリさせないようにちゃんと明日の予定もしてくれた二人の連携がなければ、私はもっと落ち込んでしまっていたのではないだろうか。
「はい。瑠璃さんごめんなさい。おやすみなさい」
「ええ、おやすみなさい。私もこれで休みます」
ナースステーションに来た時の憤りはすっかり収まっていた。
翌日から、入院中の私は手術に向けた検査が始まった。
他に何か病気にかかっていないか、血液検査もあったし、もちろん心電図、エコー、CT、MRIも受けた。
これまでにも同じような術前検査は受けてきたけれど、今回はとても気持ちが落ち着いていた。
これまでと一番違う、ヒロくんの存在はすごく大きかった。平日はお仕事中でいられないことは最初から分かっていたけれど、その代わりに、私の看護を担当してくれている瑠璃さんがずっと一緒にいてくれた。瑠璃さんだって、看護を担当しているのは私一人だけじゃないはず。
だから、私が検査室に入っているときに他の落ち着いている患者さんのところを回診して、私のところに戻ってきてくれている。本当にお部屋の先輩方が話してくれる噂どおりの看護師さんだった。
「他の患者さん、瑠璃さん来なくて怒ってませんか?」
「大丈夫です。今は美穂さんを中心にして構わないと看護師長からも言われてますので」
そんな私たちはすぐに打ち解けて、いつの間にか下の名前で呼びあう仲になっていた。
瑠璃さんが看護師になって3年目なんだと聞いて驚いた。もっと長い経歴なのかと思えるくらい手つきも慣れているし、私たち患者への対応もこれまで経験したことがないくらい丁寧だったから、本当にベテランの方なのかと思ったけれど、そうすると年齢的におかしくなってしまう。
きっとこの仕事が瑠璃さんにとっての天職なんだろうと思った。
「これでもまだまだ駆け出しなんですよ」
「そうは見えないです」
いろんな検査も、いくつも続けていくと疲れてしまう。
夕食を食べたあと、本当はヒロくんが来てくれるのを待っているはずだった。
でも、すごく眠くなってしまって、瑠璃さんに着替えの袋の場所をお願いしておいた。それにヒロくんが来たら起こして欲しいともお願いをして。
気がつくと、もう消灯の時間はとっくに過ぎてしまっていた。
窓際のテーブルの上には、私の洗濯物がきれいにたたまれて袋に入っている。
私は手洗いに行くついでにと、病室を抜け出してナースステーションに行った。
「瑠璃さん!」
確か、今日は宿直だと言っていたからだ。
夜間当直ではないから夜は休めるけど急患が入れば対応しなければならないし、明日も夕方までお仕事だという。本当に激務なのに、どうしたらあんなに優しい顔をしていられるんだろう。
「美穂さん、起きられたんですね」
「じゃなくて、ヒロくん来たんですよね? 起こしてもらう約束だったのに」
「ごめんなさい。小田さんがこんなに気持ち良さそうに寝息をたてているから、起こさなくていいと言われて。その代わり、明日は早く上がってこられると伝言を受けてます」
「もぉ、瑠璃さんどっちの味方なんですかぁ?」
もちろんここは病院。これは眠ってしまった私が悪いのだし、それをそっとしておこうと言ってくれたヒロくんと、睡眠中を起こさないようにという瑠璃さんの判断が絶対に正しいのだけど。
「小田さん残念そうでしたけど、遅くなったご自分が悪いのだからと言われまして。今日は検査がたくさんあったので疲れたんだろうと言っておられました」
でも、ちゃんと明日も来てくれると瑠璃さんに伝言をしてくれたことは本当に嬉しかった。呆れられてしまうかもと焦ったほどだったのに。
「明日は、私も夕方には上がってしまいますから、面会のお時間までゆっくりお話しされていてください」
やっぱりこの人はちゃんと分かっていてくれている。きっとヒロくんを帰すかどうか迷ったのだろう。
それでも、私の体を最優先してくれて、ガッカリさせないようにちゃんと明日の予定もしてくれた二人の連携がなければ、私はもっと落ち込んでしまっていたのではないだろうか。
「はい。瑠璃さんごめんなさい。おやすみなさい」
「ええ、おやすみなさい。私もこれで休みます」
ナースステーションに来た時の憤りはすっかり収まっていた。