笑顔の続きをまた見せて!
5話 ステージを見るための秘策
【5-1】
「竹下……。俺とずっと一緒にいてくれないか?」
俺の言葉を聞いて、竹下の顔が崩れた。
「それって……、いいの……? 私でいいの?」
「竹下を他のやつに渡したくない。付き合ってくれないか」
彼女は目を閉じて、顔を伏せる。
俺が握っていた手を一度離して、竹下は両手で俺の手を包み込んでくれた。
「きっと、心配もかけちゃうかもしれない。
でも……、小田くんとなら、私、頑張っていきたいって思う。
そんな私でも、好きでいてくれる……?」
そんな心配は最初からする必要なんてない。
「竹下、好きだ。付き合ってほしい」
「うん、いいよ。……あ……ありがとう……」
「もう、泣かないでくれよ」
「うん」
食事をしながら、彼女は昔の話を懐かしそうに思い出してくれた。
正直、俺自身も小学生の時代は暗黒時代とも言える。クラスでも目立たず、何をやらせてもどこか中途半端で。自分でも劣等感を感じていたのは事実だったし。
それなのに、竹下は俺も覚えていないことを話してくれた。きっと、何かをしようとして発生したイベントではない。普段の生活の中であったことを大切に記憶していてくれていた。
「小田くんと、クラスが離れないようにって、いつも思っていたんだよ?」
「そうだったのか……。こんな俺でも?」
「うん。それが楽しみで学校に行けたの。4年生の時、席が隣になれて……。体は辛かったときもあったけど、朝になると学校に行こうって思えたの、小田くんのおかげだったんだよ」
恥ずかしそうに笑う顔は、17年が経っていても、やはりあの竹下と変わらなかった。
「もっと、あの当時からお互いに知っていればなぁ?」
「本当だよね」
もし、あんな当時の自分でも、隣の竹下の気持ちの支えになれているという自覚があれば、もう少し小学生時代は変わっていたかも知れない。
でも、あれだけ周囲の視線があったり、そもそも恋心というものへの認識がまだ未熟だったろう。こうやってお互いの気持ちが素直に言えたかは自信もない。
「でもさぁ、竹下の中であまりにも美化されているんじゃないか?」
「うーん、どうかな? でも、私はそれでもいいと思う。だって、現実に私の前には小田くんがいるんだもん」
食事を終えて、外に出ると、予想どおりクリスマスのキャラクターショーを見るための人だかりが何重にもなっていた。
「ちょっと遅かったか」
「いいよ、私は見えなくても」
できるだけ前に人がいない場所を探してみたけれど、最前列という条件は難しい。
そのとき、俺は彼女だからできる裏技を思いついた。そして、逆に後ろ側に人が並ばないフェンス際に一度下がる。
「どうしたの?」
「竹下、悪いけどそのかばんを俺に預けてくれないか?」
「うん?」
不思議そうな顔をして、彼女はショルダーバッグを渡してくれた。それを俺の肩にかける。
「あんまり大きな声出さないでくれよ?」
人差し指を口元に当てて、俺は驚く竹下を抱き上げた。
「小田くん……」
「これなら、見えるだろう?」
そう。身長が140センチだと言っていたし、コートを着ていても、あれだけ見た目が華奢なんだ。きっと体重だってそれほどないと踏んだ。
やはり想像どおり、両腕でなら支えられる。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。
「見える! 凄いね」
「腕を俺の首に回してくれるか? それで安定するから」
「うん」
言うとおりにしてくれた竹下の顔がすぐ横に並んだ。
「ありがとう……、初めて……」
それはどちらの経験のことを言っているのだろう。
きっと問いかけたところで野暮な質問になってしまうだけだと思って、始まったステージに集中することにした。
「竹下……。俺とずっと一緒にいてくれないか?」
俺の言葉を聞いて、竹下の顔が崩れた。
「それって……、いいの……? 私でいいの?」
「竹下を他のやつに渡したくない。付き合ってくれないか」
彼女は目を閉じて、顔を伏せる。
俺が握っていた手を一度離して、竹下は両手で俺の手を包み込んでくれた。
「きっと、心配もかけちゃうかもしれない。
でも……、小田くんとなら、私、頑張っていきたいって思う。
そんな私でも、好きでいてくれる……?」
そんな心配は最初からする必要なんてない。
「竹下、好きだ。付き合ってほしい」
「うん、いいよ。……あ……ありがとう……」
「もう、泣かないでくれよ」
「うん」
食事をしながら、彼女は昔の話を懐かしそうに思い出してくれた。
正直、俺自身も小学生の時代は暗黒時代とも言える。クラスでも目立たず、何をやらせてもどこか中途半端で。自分でも劣等感を感じていたのは事実だったし。
それなのに、竹下は俺も覚えていないことを話してくれた。きっと、何かをしようとして発生したイベントではない。普段の生活の中であったことを大切に記憶していてくれていた。
「小田くんと、クラスが離れないようにって、いつも思っていたんだよ?」
「そうだったのか……。こんな俺でも?」
「うん。それが楽しみで学校に行けたの。4年生の時、席が隣になれて……。体は辛かったときもあったけど、朝になると学校に行こうって思えたの、小田くんのおかげだったんだよ」
恥ずかしそうに笑う顔は、17年が経っていても、やはりあの竹下と変わらなかった。
「もっと、あの当時からお互いに知っていればなぁ?」
「本当だよね」
もし、あんな当時の自分でも、隣の竹下の気持ちの支えになれているという自覚があれば、もう少し小学生時代は変わっていたかも知れない。
でも、あれだけ周囲の視線があったり、そもそも恋心というものへの認識がまだ未熟だったろう。こうやってお互いの気持ちが素直に言えたかは自信もない。
「でもさぁ、竹下の中であまりにも美化されているんじゃないか?」
「うーん、どうかな? でも、私はそれでもいいと思う。だって、現実に私の前には小田くんがいるんだもん」
食事を終えて、外に出ると、予想どおりクリスマスのキャラクターショーを見るための人だかりが何重にもなっていた。
「ちょっと遅かったか」
「いいよ、私は見えなくても」
できるだけ前に人がいない場所を探してみたけれど、最前列という条件は難しい。
そのとき、俺は彼女だからできる裏技を思いついた。そして、逆に後ろ側に人が並ばないフェンス際に一度下がる。
「どうしたの?」
「竹下、悪いけどそのかばんを俺に預けてくれないか?」
「うん?」
不思議そうな顔をして、彼女はショルダーバッグを渡してくれた。それを俺の肩にかける。
「あんまり大きな声出さないでくれよ?」
人差し指を口元に当てて、俺は驚く竹下を抱き上げた。
「小田くん……」
「これなら、見えるだろう?」
そう。身長が140センチだと言っていたし、コートを着ていても、あれだけ見た目が華奢なんだ。きっと体重だってそれほどないと踏んだ。
やはり想像どおり、両腕でなら支えられる。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。
「見える! 凄いね」
「腕を俺の首に回してくれるか? それで安定するから」
「うん」
言うとおりにしてくれた竹下の顔がすぐ横に並んだ。
「ありがとう……、初めて……」
それはどちらの経験のことを言っているのだろう。
きっと問いかけたところで野暮な質問になってしまうだけだと思って、始まったステージに集中することにした。