【完】溺愛体質の彼は私に好きと言わせてくれない
カタカタと小さく震える依乃里を見て、昴はまた胸が痛くなった。





こんなに心配かけていたんだ。俺の弱いところがこの子を不安にさせたんだ。





「ごめん。たくさん心配かけたね…」





その小さな頭を撫でようとした瞬間、依乃里は勢いよく顔を上げて昴に怒りをぶつけ出した。





「うぅ…ひっく。先輩のバカー!!」





バカって。ちょっと子供っぽいけど、そこが可愛いんだよな。






しかし、ポコポコと叩いてくるこの拳は地味に痛い。





耐えられるけど、心にグサグサと刺さってきてかなりのダメージが……。





こんなに目を腫らして。ずっと俺の為に泣いてくれたんだよな。





こんな姿を見せられたらもう、耐えられないや。






昴は泣いている依乃里を優しく抱きしめた。






「バカな男でごめん。それでも…」





覚悟を決めてきちんと伝えないと自分の気持ちを。逃げてばかりじゃいられない。





後輩である、八雲だって頑張ったんだ。そしてこの子も…俺に全力でぶつかって自分に打ち勝って伝えてくれた。





今度は俺がそれに応える番だ。






「先輩?」






お互い顔を合わせた。真剣な顔をしている昴をじっと見つめる依乃里。






「それでもこんな俺をまだ好きでいてくれるなら、俺と付き合ってください」
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