【完】溺愛体質の彼は私に好きと言わせてくれない
さっきの私の返し、先輩には伝わりにくかったのかもしれない。





「昴先輩。本当に私と八雲くんは深い仲ではないです。私の目には先輩しか...」





「それは分かっている」





ならどうして今も目を合わせてくれないの?





「言いたいことがあるならはっきり言ってください。先輩の考えていることが全然分かりません…」






「知りたい?俺が今考えていること」






コクンと頷くと昴はこの日初めて依乃里と対面する形で目を合わせた。





依乃里の肩に両手をそっと置いて、耳に口を近づけた。





「キミのことを教えてくれたら、オレのこと教えてもいいよ」






その言葉を聞いた瞬間、依乃里の身体はビクッとなり、全身に力が入る。






好きな人に耳元で囁かれたら嬉しいはず。






それなのに今の私はその言葉に恐怖を覚えた。





何故なのか私には理解が出来ない。






今、目の前にいるのはずっと好きだった昴先輩。





だけど今いるのはどこか違う、いつもの先輩じゃないように感じた。
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