【完】溺愛体質の彼は私に好きと言わせてくれない
力が抜けた手を依乃里はずっと握っていた。一日も早く、昴の回復を願って。







夢を見ていた。幼い頃の夢だ。病院の病室で泣いている女の子がいて、俺はその子に話しかけいた。





ダンボールで作ったテレビの枠越しに話す俺とそれを見て楽しそうに笑う女の子。






この女の子どこかで見たことあるような…。






「ん……ここは?」





俺の部屋か。どうやら死にぞこなったみたいだな。





誰かいないのか?視界がぼやけながら辺りを見渡して自分以外の家族の気配を探す。





「昴先輩…!」





その左側から誰かの声が聞こえた。昴は重い身体を必死に傾けてその声の主を探る。





「榛名ちゃん…?」





いや、なんだか違うような。榛名ちゃんはもっと高い声でこんな男みたいに低い声じゃ…。
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