甘い夜の見返りは〜あなたの愛に溺れゆく
西条社長は、ひと通り話を聞いて、
「お話ありがとうございます。私は御社が今まで培ってきたものが、当社との連携で更なる発展に繋がるよう、共に進んでいきたいと思い、今回のお話を提案しました。今後は専務が、御社と我が社の架け橋になりますので、若輩者ですが、宜しくお願いします」
大手の社長だから、もっと偉そうに、上から目線で圧がかかると思ってたけど、さすが西条HDの社長、そして湊さんのお父さんだ。
会議はその後も続き、私を弄ぶ時とは違う、湊さんの姿は、とても魅力的だ。
職場でも私生活でも、女性なら湊さんに惹かれる。
湊さんは、どんな人と付き合ってきたんだろう。
私と同じように、湊さんと肌を合わせた人は、何人いるのかなぁ。
今、湊さんが心から想う人は、どんな人なんだろう…
そんな事を考えると、会議中なのに、涙が出そうになった。

会議が終わり、秘書の方達が、帰る準備をしていると、西条社長とお父さんが雑談を始めた。
「西条社長は、立派なご子息がお二人いらっしゃって、跡継ぎは安心ですね」
「まだまだ未熟ですが、早く息子に実権を渡して、ゆっくりしたいとは思ってましてね」
「そうですね。私も徐々に準備を始めようかと、思っているのですが…」
「お嬢さんが、後を引き継がれるのですか?」
「そうですね、ただ、娘1人では頼りないので、色々と考えていまして」
「親は大変ですよね。うちの息子も早く結婚したらと思っていますが、なかなか」
「次期社長のご結婚となると、相手の方選びが大変なのではないですか?」
「そうですね、西条HDを背負っていきますので、教養とか家柄とか、西条家の社長夫人として、横に立つのにふさわしい女性を考えております」
その言葉が耳に入り、頭に物を落とされたみたいに、重く響いた。
シンデレラになっても、私はシンデレラ物語のエンディングは迎えられない。
「あのー、さっき話が決まらなかった、新事業の話はどう進めますか?」
湊さんが話を遮るように、言葉を放った。
「あぁ、そうだね。新事業の話は、私達はいいお話だと思っているよ。そうだなぁ…」
西条社長とお父さんは、新事業について、後日Web会議をしようとなり、木島さんと秘書の2人が日程調整していた。
「では、私達はこれで失礼します」
私が湊さんに目線を向けると、私と目が合い、微笑んでいた。
社長のさっきの言葉が、脳裏によぎる。
その目を直視できず、思わず目を逸らしてしまった。
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