甘い夜の見返りは〜あなたの愛に溺れゆく
お、お父さんったら!
「結羽、大丈夫だから今日は帰りなさい。木島さん、すみません、結羽を送っていただけますか」
お母さんは、片付けてから帰るらしい。
「はい、じゃあ、佐々倉さん、帰ろう」
「じゃあ、お母さん帰るね」
2人で病室を出て、1階まで降りた時、
「あれ?あぁ、佐々倉さん、僕、慌ててしまって、荷物、病室に忘れてきたから、少し待っててくれる?」
「はい、じゃあ、飲み物買って待ってますね」
「うん」
木島さんは、病室に戻って行った。
はぁ、お父さん無事で良かった…
でも、どさくさに紛れて何を言うんだか…
ブゥー、ブゥー、…
電話が鳴っているのに気がついて取り出すと、知らない番号だった。
「こんな遅くに…間違い電話かなぁ」
電話が切れて、他に着信もあったみたいで、確認すると、お母さんの番号以外に、なんと今の番号から10件以上もかかっていた。
「うそでしょ」
すると、また同じ番号からかかってきた。
よっぽど重要な用事だろうに、再ダイヤルするから…
間違ってますよ、と教えてあげよう。
「あのー、」
「結羽?」
ん?この声はもしかして
「湊…さん?」
「良かった…こんなに遅い時間に何度かけても出ないから、心配したよ」
「湊さん?どうして私の番号、知ってるんですか?」
「俺の管理しないといけないでしょ?なんて、まぁ、権力を使った、ってとこだ。結羽、今、仕事帰りなの?」
「いえ、実は」
「佐々倉さん、お待たせしてごめんね。帰ろうか」
そこに木島さんが戻ってきた。
「あ、今から帰りますので、またかけ直します」
「今の木島さんの声じゃ」
「では、失礼します」
木島さんに隠すように、一方的に電話を切った。
「電話、よかったの?終わるまで待ってるけど」
「いえ、大丈夫です。あっ、コーヒー買いました!帰りましょう」
2人で車に乗り、病院を離れ、木島さんは私の家まで送ってくれた。
「木島さん、色々と有難うございます」
「疲れたね。でも安心して、ゆっくり休んで。おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
私は車を見送って、マンションに向かって足を進めた。
そうだ、湊さんの電話、途中で切っちゃった。
どうしよう、でも、もう遅いし。
電話の画面を見つめていた時、マンションの前に止まっていた車から、人が出て来た。
「…湊さん。どうしてここに」
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