甘い夜の見返りは〜あなたの愛に溺れゆく
出張から帰った明くる日、お父さんに出張の報告に行くと、
「ありがとう。これからも2人で頼むよ」
「別に2人じゃなくても、他の人達に分担すれば、お父さんも楽になるんじゃない?」
「もちろん、役員や担当部長にもお願いするよ。でも、ここはって所は、2人に行ってもらうよ」
「社長、私がまずは1人で引き継いで、佐々倉さんには私の仕事を、少しずつ覚えてもらってはいかがでしょうか」
「先日、病室で言ったこと覚えているかね。2人に家族として引き継いで欲しいんだ」
「お父さん!」
「木島くん、君なら娘を任せられる。前向きに考えてくれ」
「お父さん、勝手に」
「そういうことだから、今後も頼んだよ。私は出掛けるから」
そういうとお父さんは2人を置いて、部屋を出ていった。
2人残されて気まずい雰囲気の中、木島さんは目を閉じて、俯いていた。
「すみません、木島さん、さっきのことは気にしないで下さい」
そういうと、木島さんは真剣な顔で私を見つめて、
「佐々倉さん、この間言ってた大切な話なんだけど、今日、仕事が終わったら、付き合って欲しいんだ」
どうしよう…
でも、この際、はっきりと自分の気持ちは伝えたい。
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、仕事終わったら、このお店で待ってて」
駅から少し離れた、個室の創作料理のお店で待ち合わせすることになった。

ようやく仕事が終わり、木島さんも仕事が片付いたようだった。
「お先に失礼します」
ひと足先に、店に向かっている時、電話を見ると湊さんから、メッセージが届いていた。
『久々に今日早く帰れそうなんだ。迎えに行くから家に来ない?』
どうしよう。
木島さんのこと伝えたら、何か言われるのかな…
でも、この間出張行く時は、何も言わなかったし、私の自惚れだよね。
『木島さんから話があるからって、これから軽く食事に行く予定なんです。終わってからでもいいですか?』
『じゃあ、終わったら連絡して』
『分かりました。終わったら連絡します』
やっぱり何も言わなかった。
木島さんと一緒になるなら、それならそれでいいって感じなのかな…
でも、私の気持ちは変らない。
木島さんときっちり話をしよう。

「お待たせ。時間貰ってごめんね」
「いえ、私もお話したかったので、丁度良かったです」
2人でゆっくり話するのは、入社した頃以来で、久しぶりだった。
何品か注文をして、少し雑談をした後、私の方から切り出した。
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