甘い夜の見返りは〜あなたの愛に溺れゆく
【夢の終わりは突然に】
「緊張しますね」
湊さんに連れられ、管理部の人に紹介してもらい、孝さんの元に向かった。
「じゃあ孝、頼んだよ。佐々倉さん、頑張って」
湊さんは優しく微笑み、その足で会議室に入って行った。
「孝さん、宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しくお願いします。入力とかファイリングが、なかなか手をつけれなくて助かります」
「何でも言って下さい」
「じゃあ、早速」
横に用意されていたデスクには、パソコンと、書類が山積みされていた。
「こ、これですよね」
孝さんは申し訳なさそうな顔して、
「すみません、1週間では無理だと思いますので、できる限りでお願いします」
「はい、頑張ります」
私は、一気にやる気が出てきて、ひたすら仕事をこなしていった。

それから1週間、湊さんはたまに声を掛けてくれるものの、次々に声をかけられ、会議室に出たり入ったりを繰り返す毎日。
新企画の大きなプロジェクトが大詰めで、忙しいらしい。
淡々と指示を出したり、話を真剣に聞いたりしている姿は、いつもと違う格好良さ。
私は定時に帰り、夜、たまに心配して掛かってくる電話の声は、いつも優しい。
「本当は孝に任せずに、仕事も俺が手取り足取り教えたいのに」
そんな会話を思い出し、色々な場面の湊さんが頭を駆け巡り、顔が火照る。
仕事中だぞ、私!
そう言い聞かせて、仕事を進めた。

あっ、湊さんと野木さん…
時々、秘書の野木さんと話をしているのを見かけると、他の人より距離が近いのを見て、胸が締め付けられた。
でも、あの2人、凄く似合っている。
あぁー、もぉー、職場で嫉妬してどうすんのよ。
野木さんは秘書なんだから。
「兄のこと気になりますか?」
不意に孝さんに声をかけられて、ドキッとした。
「あぁ、いえ、あの2人、凄くお似合いだなって」
「そうですよね。仕事も出来て、美男美女、華やかで、ドラマのワンシーンのようですよね」
孝さんは2人を見ながら、目を細めていた。
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