甘い夜の見返りは〜あなたの愛に溺れゆく
「さぁ、こちらもありますから、お願いしますね。出来る限りで大丈夫ですから」
「あの、今日最終日ですし、ここにある分は、やりきりたいんですけど、いいですか」
「少し遅くなっても大丈夫ですか?僕は助かりますけど」
「はい、では頑張りますね!」
孝さんは、湊さんと違う優しさがある。
「佐々倉さん、今日で終わりなんですね。手際がいいので助かります」
野木さんが、微笑みながら声を掛けてきた。
「あ、いえ、孝さんの手を止めてしまってます」
「あと少しですから、頑張って下さいね」
野木さんは、凜としている立ち振る舞い、品の良さ、でも親近感ある空気が安心する。
もし、私が男性なら一目惚れだ。
湊さんはこんな素敵な野木さんと一緒にいて、好きにならないのかなぁ。
あぁー、まただ!ダメダメ、集中集中!

そう、緊張しっぱなしの毎日は、あっという間に最終日を迎えた。
「佐々倉さん、ちょっといいですか」
湊さんが小さな声でささやく。
「今日社長いないから、後で役員室に来て」
その言葉だけ言うと、直ぐにエレベータに向かって歩きだした。

何とか仕事を終え、孝さんに挨拶をして、役員室に向かった。
「湊さん、ありがとうございました。皆さんの働きぶりや、書類の保管の仕方やデータ管理の仕方なども、とても勉強になりました」
「それなら良かった。孝も助かったって喜んでたよ。ありがとう」
私を引き寄せて抱きしめた。
「横を通ったら抱きしめてしまうから、近寄らないようにした」
「湊さん…」
胸がキュンとなる。
緊張した日々、胸に抱かれてホッとした。
「じゃあ、そろそろ帰りますね」
「送れなくてごめんね。今夜、接待があるんだ」
「いえ、自分で帰りますから。お先に失礼します」
「うん、お疲れ様。また連絡するね」
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