甘い夜の見返りは〜あなたの愛に溺れゆく
【未来へ、新たなる挑戦】
明くる日には、前の企画担当の人達に概略を伝えて、早速プロジェクトが立ち上がった。
さすがに西条HDの人達は、一流の人達ばかりだから、現実を見据えた上で、私の想像を遙かに超える意見が飛び交っていた。
「夢がありますね」
「結羽のお陰だよ。それに俺との将来のことも考えてくれてたしね」
私は一瞬で、顔が赤くなった。
「ここでその話は…」
「相変わらず、可愛いね。出逢った頃と変らない」
「ここで、イチャつかないで下さい」
振り向くと孝さんがいた。
「いいアイデアですよね。実現させたいんですが、予算が厳しいかもしれません。前の案は、一つの建物に、世界中の各国らしさの部屋を再現するだけでしたが、今回は4つに分けて、更に部屋も飽きないように別のものを造り上げるから、かなり費用がかかりますよ」
「確かにそうだな。だからと言って、他のアイデアはないだろう?」
「色々と出てますけど、まだ前の企画を引きずってますね」
そうだ。
予算が無いと、そもそも出来ないんだ。

湊さんと私と孝さんとで、沈黙が続いた。
そうだ!
と頭に閃いたけど、こんなこと実現出来るのだろうか。
「あの…それなら、提携企業やホテルや旅館に声かけてみたらどうですか?」
私は経営のことは分からないけど、思いついたことを口にした。
「どういうこと?」
「広告宣伝として、部屋の権利を提供するんです。そのホテルや旅館を、私達の考えであるコンセプトは崩さないのを条件で、再現してもらんです」
湊さん達は『ん?』という顔で、私の話を聞いていた。
「ネットで見て、行きたいけど、行けないこともありますよね。そんな部屋が、一つの場所でいくつも味わえる。気に入ったら、本物のホテルや旅館に行ってみたい。それが宣伝効果につながるかと」
あまりに空想の世界で、大丈夫かと思いながら、溢れ出る気持ちが止まらなかった。
「敷金を建築資金に充てて、家賃のように提供収入を得ていくっていうのはどうでしょうか」
そういうと、孝さんも話に加わってくれた。
「売上高によって報酬受け取る方法もありますね。ただ、賛同する企業は有りそうですけど、ホテルや旅館はどうなんでしょうか」
すると、湊さんも案を出しだした。
「声を掛ける価値はあるよな。実際にそのホテルや旅館に行きたくなるような、宣伝効果を兼ねた部屋造りにするなら、応募してくれるかもしれない」
「色々制約を掛けないといけないから、難しいですよね。僕、早速、法務部に声掛けてきます。今の話を説明して、色々なリスク面を潰していきますよ」
「あぁ、頼んだよ」
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