甘い夜の見返りは〜あなたの愛に溺れゆく
初めて会った時のおどおどしていた孝さんは、年上の野木さんと付き合うようになって、男らしくなった。
見た目は、あまり似ていないけど、孝さんの柔らかい表情は、湊さんと違う、惹きつける魅力がある。
「結羽、孝の事見過ぎ。格好いいとか思ったでしょ」
「な、何言ってるんですか」
「じゃあ、今の案、まずは親父に報告に行こう」
2人はその足で、社長室に向かった。
「親父、簡単にだけど今思い付く案なんだ、これで進めたいけど、どうかな」
湊さんは、さっきの話を纏めて、社長に報告をした。
「うちと提携先とWinWinな関係が見込めるな。前の企画より面白いと思うよ。湊、お前なら今からでも西条HDを任せられるよ」
「そうだろ?でも、このアイデアは、結羽が考えたものだ」
「佐々倉さんが?」
「あぁ、それと結羽が俺を支えてくれたから、ここまで来れた。結羽が居なかったら、心折れてたよ」
「そうか…それなら、2人の事を認めるしかないな。佐々倉さん、先日は無礼を言って、申し訳なかったね」
「いえ、そんな…」
湊さんが私の肩を抱き寄せ、
「それと、まだまだ俺は、専務で自由にさせて貰うよ。だから、親父はまだ社長で頑張ってくれよ」
「ふっ、そうだな。お前達には、私が叶わなかった、2人の時間を楽しませてあげたいからな」
私はその言葉に涙が溢れて来た。
「ありがとうございます」
私は一礼をして、湊さんと一緒に部屋を出た。

それから慌ただしく、毎日遅くまで企画会議があちこちで行われ、営業部は、まずは全国に足を運び、大手ホテルではなく、老舗の旅館などを巡回した。
湊さんも、地方で自分が泊まりたいと思った旅館に交渉に行くことになった。
「結羽のイメージがあるだろうから、同行して欲しい」
そう言われて、私も一緒に付いて行くことになった。

私は甘く見ていた。
賛同するホテルや旅館が、簡単に見つかると思っていた。
でも、世間は厳しいことを、私は思い知った。
「宣伝をして多くの人が来られても、受け入れ出来ない」
「お得意様を大切にしたい」
中には
「西条HD?あんたらに頼むくらいなら、旅館閉めるよ!二度と顔を出すな!」
そう言われて、門前払いの所もあった。
その後も何軒か回ったけど、投資資金が出せない所も多かった。
「今日はここで最後にしよう」
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