甘い夜の見返りは〜あなたの愛に溺れゆく
【2人を彩る夜は】
忙しい毎日が過ぎ、季節を味わう暇もなく、湊さんは全国を飛び回っていた。
今日はクリスマス。
少し早いけど、年末の挨拶に佐々倉フーズを訪れた。
木島さんの奥さんがパートとして入社して、私の代わりに仕事をしてくれている。
「家でも会社でも尻にひかれてるよ。これ内緒ね」
何でも出来る木島さんが、照れくさそうに話をしてくれた。
私の荷物は、社長室に移動させていたから、掃除と要らない物を処分して、マンションに帰ることにした。
外に出るとすっかり暗くなり、クリスマスのイルミネーションが街を彩り、友達同士や恋人同士が楽しそうに歩いている。
いいなぁ…
今年初めてのクリスマス。
やっぱり湊さんと一緒に過ごしたかったなぁ。
湊さんは営業部の人達と、23日から九州と沖縄に出張で、明日26日に帰って来る。
1人で寂しくケーキでも食べようかな。
駅の近くに来て空を見上げると、雲が無く、晴れ渡る夜空に、大きな木に何色も彩られたイルミネーションが光り輝いていた。
幻想的な世界に引き込まれる。
そうだ、湊さんに写真送ろう。
直ぐに湊さんに送ったけど、返事は来なかった。
きっと、まだ仕事中だよね。
しばらく近くで見てたけど、これって遠くから見る方が綺麗かも。
うん、もう1度写真撮って送ろう。
全体が映るように少し人混みから離れたところで写真を撮った。
うん、いい感じ。
仕事中だから、あとで送ろう。
保存した後、電話のアルバムを開くと、湊さんとの写真が増えていた。
出逢ってから色々あったなぁ…
ため息をつきながら、もう一度見上げた。
「離れて見る方が、静かで綺麗…」
「本当だね」
「えっ?」
耳元で聞こえたその言葉に、振り向こうとした時、後ろから優しく包み込まれた。
この香り…まさか。
「やっぱり、初めてのクリスマスは、2人で過ごしたいよね」
振り向くと湊さんが、微笑みながら立っていた。
「どうして湊さんがここに?」
「一気に皆でスケジュールこなして、帰って来たよ」
私はびっくりしたのと同時に嬉しくて、湊さんに抱きついた。
「嬉しいです」
「せっかくだから、2人で写真撮ろう」
湊さんに肩を抱かれ、イルミネーションをバックに2人で写真を撮った。
恋人って実感する。
にやけながら写真を見てると、湊さんが私の後ろに回り、
「これ、クリスマスプレゼント」
可愛いハートの形をしたネックレスが胸元で光った。
「あ、ありがとうございます。でも、私まだ何も買ってなくて」
「それは寂しいなぁ…」
「ご、ごめんなさい」
「じゃあ、これで許す」
湊さんは自分のマフラーを外し、私に巻いて、口元を下げたと同時に口づけを交わした。
「だ、誰かに見られたらどうするんですか」
「皆、自分達のことでいっぱいだよ」
もう1度唇を重ね、ぎゅっと抱きしめられた。
「あぁ、やっぱりこれだけじゃ足りない。帰ってからたっぷり貰うよ」
悪戯に微笑む湊さんに、帰ってからのことを想像して体が熱くなった。
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