甘い夜の見返りは〜あなたの愛に溺れゆく
「あぁ、実は営業部長が視察に行ったら、ラブホテルみたいだったって言ってたよ」
「ラ、ラブホテル?」
湊さんが、1度くらいは経験した方が良いと、連れて行ってくれたことがある。
そこは鏡張りの部屋で、目を開けれなかったことを思い出して、顔が赤くなった。
「結羽が想像しているのとは、全然違うよ」
あの部屋しか知らないから、びっくりした。
それよりも、私の心を読まれてたことが、恥ずかしい。
「あの、つ、続きを」
「あの企画ね、世界中の各国らしさをコンセプトに、若い人達をターゲットにして、ファンタジーっぽくしようと思ったけど、若い人達がリッチな気分を味わえるようにという案も出て、路線変更しようとしていた途中だったんだよ。だから中途半端な状態を、高山さんは覚えてたんだね」
そ、そっかぁ…
鏡張りとかを想像した自分が恥ずかしくなった。
「それでも、外観や大浴場とか集客の核とした戦略は、類似してたからね」
「その企画、またアレンジしても面白いかも」
「そうだな、その時は結羽のアイデア、聞かせてよ」
「はい」
西条HDで仕事していると、何故会社が大きくなってきたか分かった。
仕事をしていると、ワクワクするんだ。
今の最善を尽くそうと、誰からとも無く、皆が動き出す。
そして、湊さん達が率先して動くから、周りの人も負けじと動き出す。
いつも冷静で、判断力、行動力があって、申し分ない湊さん。
本当に尊敬する。専務としては…

2人でお風呂から上がり、浴衣を着ると、専用の浴衣ではなく、違う浴衣だった。
「あれ?決まったのはこれじゃなかったような…あっ、これあの時の!」
「言ったでしょ?俺と泊まる時は、この浴衣だって。うん、ママになっても、そそられるよ」
引かれた布団に押し倒され、湊さんは、まだ濡れている私の髪を撫でる。
専務としての姿とは違う、甘々の湊さんを知っているのは、私だけだ。
「そろそろ、もう1人くらい子供が欲しい。結羽みたいな女の子もいいなぁ」
「箱入りにすると、私みたいになりますよ」
「…俺、今想像するだけでも、怒りの感情が…結羽のお父さんの気持ち、分かる気がする」
「湊さんたら、気が早いですよ」
「そうだね。考えても仕方ないか。まずは結羽を愛してからだ」
夫婦になっても、いつまでも変らない湊さんの愛。
私はきっとこの先も、湊さんに溺れ続ける。

あの日の私は、こんな未来を知らない。
甘い夜の見返りが、こんな素敵な人生を迎えることを。

END
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