甘い夜の見返りは〜あなたの愛に溺れゆく
「湊さん…私のわがままを聞いて貰えますか?」
「いいよ、どうしたの?」
私は顔を上げて、湊さんの目をじっと見て、心の声を口にした。
「…ご迷惑じゃなければ、もう少しだけ、傍にいてもらえますか」
湊さんはじっと私の目を見つめたままだった。
やっぱり、突然こんなこと言っても迷惑だよね。
軽い女、って引かれたかなぁ…
私は、そんなこと言う自分が恥ずかしくて、でも切なくて、涙で目が潤んだ。
「す、すみません、急に変なこと言って。忘れてください。あの、ありがとうございます。し、失礼します」
「いいよ。俺でいいなら」
湊さんに手を引かれて、エレベータに乗ると、私の部屋より上の階に着いた。
そこは最上階の部屋。
「夜景、綺麗だから」
そう言って、湊さんは部屋のドアを開けた。
今日出逢った男性の部屋に入るなんて…
自分の大胆さに驚きつつ、ドキドキしながら中に入った。
部屋は、同じホテルの部屋とは思えないくらい、広く、高級感あふれる部屋だった。
「す、凄いです・・・た、高いですよね、このお部屋・・・」
「ははっ、仕事でね、だからホテル代は会社が払ってるから」
仕事でこんなホテルに泊まれるって、それにもびっくりだ。
「ウィスキーでも飲む?それともお水の方がいいかなぁ?」
「じゃあ、お水、お願いします」
「了解。そこのソファに座って、少し待ってて」
しばらくして戻ってきた湊さんは、隣に座り、水をテーブルに置いた。
「結婚はもうすぐなの?」
「いえ、まだ相手の人は知らないです。父が勝手に盛り上がってるというか…でも、受け入れないとダメなのかなと」
「そう…ねえ、結羽さん」
「はい」
「私に、いや俺に何か出来ることあるかな?」
「出来ること…」
私は出来る事なんてあるかなと、少し考えたけど、思いつかなかった。
「今日、私の話を聞いてくれて、こうして一緒に過ごしていただいたので、十分です」
「…十分なの?」
十分…
あぁ、さっき頭を撫でられたドキドキを、もう1度だけ味わいたいなぁ…
「あの…もう1度頭を撫でてもらえれば…」
「いいよ」
湊さんは私を抱き寄せ、ゆっくりと頭を撫でた。
だ、抱き寄せられるまで想像してなかった。
賑やかな私の鼓動が、湊さんに届いていたらどうしよう。
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