再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
翌朝、夏休みの最終日を迎えた。

本来なら一日中近付く二学期に憂鬱になっているけど、今日は……今日も悠くんと一緒だから平気なんだ。


昨日の夜に決めた服を着て、メイクをした。


「悠くん、おはよう」


宣言通り、九時前にやって来た悠くんに挨拶をする。


「おはよう、響。その格好もすごく可愛いよ」

「あ、ありがとうっ」


何度言われても慣れない……っ。

相変らずドキマギしている私だけど、悠くんは私とは逆に笑顔で落ち着き払っている。

何をすれば動揺するんだろう……?

そんな悠くんを見てみたいと思ったのは自分だけの秘密。

いつものように指を絡ませて手を繋ぎ、悠くんが空いた手で私の日傘を差して駅まで歩いて行った。


電車は既に混みあっていて、座る場所はなかった。

運良く空いていた二人分の吊革があるスペースに並んで立つ。

吊革を掴めるだけありがたい。

私と悠くんは目的地に着くまでの間世間話をしていた。


「水族館、小学生の頃以来だよ」


低学年の頃、お父さんに連れて行って貰った時以来かな。


「俺も。長いこと行ってないや」


意外……水族館と言えば定番のデートスポットだ。

てっきり環お姉さまと付き合っていた頃、一緒に行ったものだと思っていたよ。

ま、まさか……っ、悠くんが彼女と水族館に行くのは私が初めて?

確証は取れないけど、そうだと嬉しい……。


「私ね、」


隣に立つ悠くんをちらりと見つめると、すぐに車窓から見える景色に視線を向ける。

これから言うことに気恥しさが勝り、俯いてしまった。



「夢だったの。彼氏と水族館に行くのが。だから、悠くんと行けて嬉しいよ」
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