再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
海岸は遊泳期間が終わったのか、人はほとんどいなかった。

遊泳期間中だったら、ごった返しになっていたんだろうな。

そういう時期に海に行こうって話がなくて良かった……と思う。

体型に自信がなくて水着を着る勇気はなかったから。

何より女の人の視線を集める悠くんに、嫉妬してしまそうで怖い。

こんな醜い感情を持ち合わせているなんて、悠くんは知らなくていい。



いつの間にか日は傾いていてオレンジ色の空に変わっていた。

波打ち際を手を繋いで歩きながら、夕日を眺めていた。


「わあ、綺麗……」


水平線に沈む夕日に感嘆の声をもらしている私がいた。


「とても綺麗だね」


悠くんのお陰でいい思い出が出来た。

明日から憂鬱な二学期が始まってしまうけど、頑張れそうだよ。

私のわがままに付き合ってくれた悠くんに感謝だ。


「────のに」

「何か言った?」


ふと、悠くんが何かぼそりと独り言を零していた。

よく聞こえなくて首を傾げて尋ねると、悠くんは目を細めて柔和な笑みを浮かべた。

そして、耳元に顔を寄せてそっと耳打ちした。


「響にキスしたいって言ったよ」

「え!?」


予想していない悠くんの答えに、私は動揺してしまい、視線をさまよわせてしまう。


「ここ、外だよ……?」

「日傘で隠すから誰にも見られないよ」


夕方とはいえ縁日の時と違ってまだ明るい。

悠くんは器用に日傘で隠すと、私の顎を上げてキスをした。

私は悠くんの背中に腕を回して、食べるようなキスを受け入れていた。


「はぁ……ん、う……」


自分のものとは思えない甘い声に内心驚きを隠せない。

酸欠にならないようにゆっくりと鼻で呼吸をしながら、悠くんからの啄むようなキスを何度も繰り返しされ続けていた。

何度されてもこのキスに溶けてしまいそうになる。
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