再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
あなただけは違う
夏休みが明けて、二学期が始まった。

相変わらず学校での状況は変わらず、私は爪弾きされていた。

一学期と違う点は、悠くんに会うことで一日一日を乗り越えられているということ。

根本的な解決は出来そうにないけど、悠くんに会うことでまた頑張れるの。

今のところ、悠くんと別れろだのと詰め寄ってくる人は現れてこない。

軽く恋愛小説脳の私は、そんな展開を覚悟していたけれど、何事もなく平和なお付き合いが続いている。

まだ一ヶ月も経っていないということもあるけど、悠くんとの喧嘩もない。

怖いくらい幸せなの。





二学期が始まって十日が過ぎた頃。


「笹山さーんっ」


昼休みになり、どこでお弁当を食べようか考えている時、桐谷さんが笑顔で私のところに駆け寄ってきた。

話しかけられたのは初めてで、戸惑いを隠せない。


「どうしたの……?」


私が問いかけると、桐谷さんは愛らしい笑顔を私に向けた。

か、可愛過ぎる……っ。


「よかったらお弁当一緒に食べない?」


内心、桐谷さんの可愛さに悶絶している私に、思いがけず声をかけられた。

今のお誘いは私に? 聞き間違いじゃないよね?


「いいの?」

「うん! 真菜、笹山さんとお話したかったんだぁ」


悪い噂で仲間はずれな私に、分け隔てなく声をかけてくれた桐谷さんが天使に見えた。

う、嬉しい……っ。


「ありがとう……っ。それなら一緒してもいい?」

「よかったぁ。一緒に移動しよう」

「うんっ」


私はランチトートを手に席を立つと、桐谷さんと、彼女の友達に続いて教室を後にした。

初めてのぼっちじゃないお弁当、楽しみ……っ。
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