再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
その人は名前は知らないけど、同じ学年で見かけない人だから先輩だと思う。

いかつくて、ヤンキーっぽい風情をしている。

そんな人がどうして私に声をかけたんだろう。


「すみません、人を待たせているので今度にしてください」


以前、悠くんが拾ってくれたスマートフォンの受け取りに行った時のように、待たせる訳にはいかない。

申し訳ないけど、日を改めて貰おうつもりだった。

だけど、依然としてその人は私の手首を掴んだまま離そうとしない。

ニヤニヤと笑っている顔が、何か企んでいるように見えてしまい怖い。


「お前に拒否権ないから」

「痛っ！」


思い切り腕を引っ張られて、痛みに顔をしかめてしまう。

助けて……！

私は下校中の沢山いる生徒に視線を送るが、皆は視線をそらしたり、時折ちらりと視線を向けながら他の人とこそこそと何かを話していた。


「噂通りなんだ」
「流石。よく堂々と浮気出来るよね」
「彼氏さん可哀想ーっ」


耳に入った会話に血の気が引く。

違うのに……！

何もやましいことはしていないのに、悠くんに誤解されたくないよ。


「離して、ください……」

「話が終わったらな」


何度お願いしてもその人は離すことはなくて。

その人は周りの奇異な視線なんてお構いなしに、足早に私を引き連れてどこかへ向かっていた。
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