再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
思い切り背中が壁に当たってしまったけど、痛みを感じる余裕がないほど、恐怖に支配されていく。
他校の身なりの派手な女の子の場合と違って、男の容赦ない力は、殺されるのではないかと思わせる。
胸ぐらを掴まれ、息苦しくなる。
叫びたくても声が思うように出せない。
得体の知れない恐怖に、目の前の視界が歪み始めた。
「その泣き顔いいねえ」
「ひっ、」
私、この人に殴られたりするの……?
怖いよ……っ、助けて……っ。
頭の中に真っ先に浮かび上がったのは、悠くんだった。
その時、急に息苦しさから解放された。
目の前にいるのは厳つい男の先輩ではなく、見知った背中。
顔を見なくてもすぐに分かった。
「俺の彼女に何してるの?」
盾になるように私の前に立つのは、紛れもなく大好きな悠くんだった。
悠くんを見た瞬間、急に全身から力が抜け落ちてヘナヘナと座り込んでしまう。
「いや、ちょっと……」
「早く……ない?」
近くにいるのに、二人のやり取りが耳に入ってこない。
動かなきゃ。悠くんが男の先輩に殴られてしまう。
頭では理解しているのに、体は立ち上がることすら出来ない。
情けないことに、震えながら膝を抱えていた。
「怪我はない?」
どれくらい時間が経過していたのか、悠くんの声に私ははっと我に返った。
いつの間にか男の先輩はいなくなっていた。
「だ、大丈夫……」
心配かけさせないように応えると、悠くんは突然着ていた薄手の黒のカーディガンを脱ぎ、私の肩に掛けた。
「響、これ羽織って。ボタンが……」
「あっ……」
胸ぐらを掴まれたせいなのか、シャツのボタンが三つちぎれていた。
中に着ていた黒のキャミソールが見えている。