再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
いかに乱暴に扱われていたかを物語っていた。


まだ体が震えていて、自力で立って歩ける状態じゃない私を、悠くんはわざわざタクシーを捕まえて家まで送ってくれた。


「ありがとう……」

「電話、夜中でも遠慮なくしていいから。また明日迎えに行くね」


そう言って背を向けた悠くんに思わず声をかけてしまった。


「まって……」


その声が届いたのか、悠くんは立ち止まり私の方へ振り向く。


「あの、悠くん……うちに、上がって……」


依存しないようにって決めたのに。

心は一人にしないで、傍にいてと叫んでいる。


「……いいの?」

「お父さん仕事で遅いの。一人は怖いよ……」


お願い……窺うように、それでいて切実に悠くんを見つめた。


「いいよ。響が安心するまでいるよ」

「ごめんなさい……」


自立出来ない彼女で、ごめんなさい……。


付き合ってからは悠くんのお家ばかりで、私の家に上げるのはストーカーの相談以来久しぶりだった。

そして、悠くんを通したのは客間じゃなくて、今度は私の部屋。

酷い状態の格好から着替えるべく、部屋の前で待ってもらって急いだ。

着替えたふくらはぎほどの丈のノースリーブのワンピースも、悠くんが選んで買ってくれたものだ。


「どうぞ……」

「お邪魔します」


初めて悠くんを部屋に入れる。

本来なら緊張しているところだけど、先ほどの怖い目に遭ったせいか強い安心感を覚えていた。


ソファーに座っていると、柴田さんが紅茶を持って入って来た。

いつもと違う私をに気付いていたようだけど、悠くんがいる手前何も聞かずに部屋から出ていった。
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