再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
こんなことってあるの? 意中の相手が拾ってくれるなんて。
私は夢オチじゃないかと怪我してない方の頬を軽くつねってみたけど、痛みが走るだけで現実で起きたことだと分かった。
「はい……あの、もしかして今日助けて頂いた方ですか? 私が分かりますか?」
「ああ、あの時の」
「良かった」
私は覚えていてくれたことに、安堵と嬉しさを感じていた。
「貴方が拾ってくださったのですね。重ね重ねすみません」
「俺こそすぐに渡せなくてごめんね。追いかけたんだけど、電車が行っちゃって」
わざわざ追いかけてくれたんだ。
どうして気付かなかったんだろう。確かに緊張していて頭の中が混乱していたけれど……。
「私が鈍臭いばっかりに迷惑かけて申し訳ないです」
「今日は流石に遅いから、渡すのは明日でもいい?」
「大丈夫ですよ。どこで会いましょうか」
「分かりやすく今日別れた駅にしようか?」
そっちの方が分かりやすい。
私の学校まで来るなんて言われたら、申し訳なさと周りの目線が怖いから助かった。
「そうしましょう。学校が終わったらすぐに向かいますね。四時位になると思います……名乗るのが遅くなりましたが私は笹山と言います」
「俺は北川です。笹山さんまた明日」
「北川さんですね。そろそろ失礼します。おやすみなさい」
通話を終えた後、子機をテーブルに置く。
ふらふらとベッドへ向かい、横たわった。
「緊張した……」
彼……もとい北川さんと沢山話してしまった。
「お礼をしなきゃね……」
私の独り言は室内に静かに溶け込んでいった。