再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません

「チョコバナナと、ハムチーズ一つずつ下さい」
「いちごと生クリーム下さい」
「カスタードクリームで!」


私のクラスがやるクレープ屋は、想像以上に繁盛している。

桐谷さんとお友達が呼び込みを頑張っているお陰だと思う。お客さんは途切れることなくひっきりなしに訪れている。

私はせっせと生地を焼いていた。

十一月上旬の終わりの割に暖かな気候で、ホットプレートの暑さのせいで汗が滲んでくる。


「おい、見ろ。あそこにいるクレープ焼いてる子……」
「うわぁ、すげえ……」
「これはやばい……」
「……過ぎだろ」


他校の人と思われるの男の子二人が、ひそひそと何かを話している。

クレープを焼いてるって私のこと……? 私以外の調理担当はトッピングして巻く作業をしているから、生地を焼いているのは私しかいない。

陰口を叩かれていると被害妄想に陥ってしまう。

早く当番から解放されたい……悠くんに会いたい……。

急に心細くなって、泣きたくなった。





当番が終わるまであと三十分。

悠くんの姿が見えた。

ただ、悠くんは一人で来たわけでなく、同性のお友達と一緒てもなかった。

小柄で緩く巻かれた長い髪をなびかせる愛らしさのある美人さんだった。

同じ大学の人? それとも、過去の彼女?

二人の関係は分からないけど、一つだけ分かることがある。

あの美人さんは悠くんが好きだということだ。



悠くん、その笑顔を他の人に向けないで。

私の中で真っ黒な感情が溢れ出す。なんて醜い感情だろう。


私は胸の中に渦巻く嫉妬と自己嫌悪を払拭するように、生地を焼くことに集中していた。
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