再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
「体育館で軽音のライブがあるけど、観に行く?」
一通り見て回った後、悠くんが軽音のライブの告知ポスターを見ながら聞いてきた。
私はその問いかけに小さくかぶりを振って、繋いだ手にぎゅっと力を入れた。
「こっち、来て……」
私は悠くんの手を引いて、ひとけのない場所を目指していった。
私の歩みは、誰もいない裏庭で止まった。
この裏庭の真ん中に大きな桜の樹があって、入学した頃に見た満開の桜は目を奪われるほど美しかった。
「いきなりごめんね。悠くんに見とれる女の子がいたから……つい……」
こんな嫉妬する彼女は嫌になる?
私は気まずくなって、悠くんから目をそらしてしまっていた。
「そんな子いたの?」
しかし、悠くんは私の予想とは違う反応を見せた。
やっぱり、悠くんは無自覚なんだ……っ。
「気付いていなかったの?」
「響しか見えなかった」
私……?
悠くんの言動に目を丸くさせた。
「なにそれ……ふふっ」
ストレートに言われると、うじうじしていたのが馬鹿らしくなってきて、思わず小さく吹き出してしまった。
悠くんを疑うつもりはないのに、私が自分に自信がないばかりに勝手に不安になって落ち込んでいた。
悠くんはいつだって私を大事にしてくれていたのに。
これからは少しでも自信が持てるように心がけていこう。
私はおずおずと悠くんに抱き着いた。