再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません


「響の彼氏の北川です。響の友達かな?」


悠くんの問いに、桐谷さんは両手で口元を押さえながら笑い声を零し始めた。


「まさか、ありえないって。彼氏さん、学校での笹山さんを知らないんですかぁ?」


え……やだ、お願い、言わないで……!


私は切実に願うけれど。


「それはどういう意味?」


私の心境を全く知らない悠くんは、桐谷さんに質問を返してしまった。

血の気が引いて、少し目眩がしてきた。

暖かい気候だけど、寒気がして、私の額から冷や汗が吹き出す。


「笹山さん、みんなに無視されているんですよ。良くない噂がいっぱいあるから嫌がらせされていますよ」

「ち、違……」

「本当のことでしょー? それに……」


もう、話さないで……! これ以上悠くんに知られたくない。


「桐谷さん、やめて……っ!」


私はなりふり構わず必死に声を張り上げた。


「中学の頃、取り巻きを使って幼なじみをいじめていたんだって。当時の同級生から聞いたから間違いないですよ」


────だけど、もう手遅れだった。


私が必死に作り上げた、それなりに友達がいて平凡な私は、呆気なく脆く崩れ去ってしまった。
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