再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
「なんですか……?」


恐る恐る振り向き、尋ねてみる。

お願いっ、今日は私に頼まないで……!

切実に願ってみるも虚しく、担任の先生は申し訳なさそうに私に告げた。


「すまん、手伝って欲しいことがあって」


遅刻が確定してしまった。


「明日じゃ、ダメですか……?」


祈るような気持ちで窺うと、先生はなぜか狼狽えだした。

まだ若い先生だから、生徒に対して腰が低くなることがある。

私にもそうだった。派手なタイプじゃないし、クラスの中心的な存在でもないのに。


「ほんと、すまん。今日中にやらなきゃダメで……」


心の中の私は白目になっていた。




先生の言う手伝いは、資料をまとめてホッチキスで留めるものだった。

大きめの重そうなダンボール箱に、プリントがぎっしり詰まっている。

職員会議が終わるまでの間でいいと言うけれど、その会議は最低でも三十分はかかってしまう。

ペーパーレス化が進みつつあると言うのに、どうして電子化にしないんだろう。

そうすれば、先生やお手伝いを頼まれた生徒の負担が軽くなるのに。

何より……北川さんが待ちぼうけにならずに済んだはず。

もう、約束の四時は過ぎてしまっている。

延々とホッチキスで留め続けているけど、プリントの量が半端なくて中々減りそうにない。

先生、早く会議を終えてください……っ。

私は心の中で叫びながら作業を進めていた。。



「笹山さん、手伝ってくれてありがとう。会議終わったからもういいよ」


この途方もない事務作業は、四時半に先生が戻ってきたことでようやく解放された。
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