再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません

二人しかしない店内に、川端さんの暗いトーンの声が静かに広がった。

悠くん……!

私はあまりのショックに目の前が真っ暗になり、意識を手放してしまった。





目を覚ますと、私はカウンターからテーブル席のソファーに寝かされていた。


「響ちゃん、大丈夫?」

「すみません」


ショックを受けて気絶したのは初めてだった。

川端さんに支えられながら半身を起こす。


悠くん……。

入院しているってことは、生きているって意味だよね?


「川端さん、悠くんは、無事なんですか?」


祈るような気持ちでいると、川端さんは詳しいことを私に教えてくれた。

「手術は上手くいったよ。幸い刃物が内臓に到達していなかったし、破片も見つからなかった。ただ、出血は酷かったせいかまだ目を覚まさないんだ」


「……どうして、悠くんがそんな目に遭ったのですか?」


非の打ち所のない優しい悠くんが、誰かの恨みを買うような人には見えなかった。


「加害者は北川と同じ大学の女だよ。月見里(やまなし)(みやこ)だったかな。彼女はあいつを好きだったみたい」


私は、悠くんと話していた美人さんを思い出した。

そして、去り際に、桐谷さんが都ちゃんと呼んでいた声が遠くから聞こえた時も。


“殺人未遂者の血縁者”


桐谷さんのお友達が言っていた言葉が頭を過ぎり、パズルのピースがはまったかのように話が繋がった。

月見里さんが悠くんを刺した。

その月見里さんと桐谷さんはいとこ同士だ。
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