再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
地味な不運は立て続けに起こった。

目の前で電車が行ってしまい、五分立ち往生していたり、電車内で知らないサラリーマンのおじさんに舌打ちしながら押し退けられたりした。


結構凹んだけど、それ以上に北川さんが待ってくれているか気がかりだった。

待ち合わせ場所の駅前に辿り着いた頃には、五時を過ぎていた。

少し離れたところから北川さんを見つけたけれど、彼の容姿は非常に目立つ。

佇んでいるだけなのに、一枚の絵のように様になる。


底を尽きそうな体力を無理矢理絞り出して、彼の元へ駆け出した。


「北川さん、だいぶ待たせて、ごめんなさい……」


膝の上に手を置いて肩で息をしている私は、体力が人よりない。

病弱ではないけれど、少し走るだけでばててしまう。

更に夏日のせいで汗だくだ。

踏んだり蹴ったりとはこのことかもしれない。

だけど、北川さんからは不機嫌な様子は見られなかった。


「そこまで待っていないから気にしないで。笹山さん、大丈夫?」

「っ、はい……」


優しくないですか? 一時間以上の遅刻はブチ切れてもおかしくないレベルだと思うのに、ぜえぜえと荒い呼吸を繰り返す私に気遣ってくれる。


「今日は暑いし、お店に入って休憩しようか。スマホはその時でいい?」

「はい……」


無意識に頷いていたけど、私の頭の中は北川さんの発言に驚いてパニックに陥っている。

スマートフォンをその場で渡して「さようなら」じゃないんだ。

私に時間を費やしていいんですか?
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