再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
おずおずとドアを十数センチ開けて、その隙間から中の様子を窺う。
中には川端さんと、ベッドの上で半身を起こしている悠くんがいた。
「か、川端さんっ」
「入ってきな、響ちゃん」
川端さん、まだ心の準備が出来ていないのに……っ。
おろおろとうろたえていると、悠くんとパチリと目が合った。
「悠くん……あの……」
“入っていいの?”と尋ねる寸前。
「おいで」
悠くんは私を手招きしながらそう告げた。
恐る恐ると病室に足を踏み入れて、悠くんの元へ近づく。
ベッドの傍に空いたパイプ椅子が置かれていて、悠くんが視線をそれに移した。
座ってもいいの? ためらいながらそれに腰かけた。
こうして面と向かい合うのは、文化祭の日以来だ。
私が座ると同時に川端さんは何も言わず病室から出ていき、私と悠くんの二人きりになった。
ずっと閉ざされていた琥珀色の双眸か私に向けられている。
本当に目を覚ましてくれたんだと改めて実感することが出来た。
「よかっ、た、よ……」
水道の蛇口をひねったみたいに、私の両目から雫が溢れて、頬を濡らしていく。
「目を覚ましてくれて、良かった……」
「心配かけてごめんね?」
悠くんは手を伸ばして、指で目元に溜まる涙を拭いとってくれた。
そして、私が泣き止むまで何度も髪を撫で続けた。
その大きな手はとても温かくて、ずっと抱えていた寂しさを癒してくれた。