再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
お誕生日
連絡先を交換してからは、毎日ラインのやり取りをするようになった。

ソファーに座っているか、眠る前にベッドに寝そべってメッセージを送り合うのは、私にとって至福のひと時だ。



《笹山さんの下の名前、なんて言うの?》

《響です。きょうと呼びます》


以前会った日を覚えていないことに寂しさを覚えつつ、私は北川さんの質問に答えていく。


《綺麗な名前だね》


名前に対してとは言え、綺麗と言われて焦ってしまう。


《そうですか……? 男の子っぽいですよね》


通っている誠稜高校は共学で、名簿は男女混合だから、君付けで呼ばれたことが何度かあった。

私が返事をした時の先生方の気まずそうな顔は覚えている。


《いい名前だと思うよ》

《ありがとうございますっ。北川さんはなんてお名前なんですか?》

《悠だよ。なんて呼ぶか当ててみて》

《ゆう、はるかのどちらかですか?》


……なんて、本当は知ってるよ。あの頃に北川さんが教えてくれたもの。

男の人を下の名前で呼ぶのは私にとってハードルが高くて、苗字でしか呼べなかったけれど、ちゃんと覚えている。


《はずれ》


程なくして北川さんから返事が来た。


《違うんですか?》

《ゆたか、って呼ぶんだ。ややこしいでしょ》


北川(きたがわ)(ゆたか)
それが彼のフルネームだ。

《確かに難しいですね》


びっくりしている猫のゆるキャラのスタンプを追加して、いかにも初めて知って驚いたような反応をしてみせる。

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