再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません

翌朝。

いつものように登校する。

五月は末に差し掛かり、衣替え期間の今、夏服に切り替えた生徒が大半を占めている。

私もその一人で、半袖のシャツにネクタイを結び、紺色のベストを重ねている。

最近は日焼けしないように日焼け止めを塗って、外に出る時は折りたたみの日傘を差している。

学校に到着し、上履きを取り出そうと靴箱を覗き込む。

その瞬間、私は血の気が引くのを感じた。


「ひっ……!」


靴箱の中に、ズタズタに切り刻まれた上履きがあった。

おまけにおもちゃのスライムが数種類放り込まれていて、中はベタベタだ。

スリッパを借りて、雑巾で綺麗にして……。

頭の中はこれから何をすべきか考えていたけど、体は棒立ちのまま動けない。

視界がぐにゃぐにゃと歪んで、涙を溜めていたことに気付いた。

昨日の夜、北川さんとラインのやり取りをして楽しかった分、落差が激しい。


「ひっ、く……」


どうして、こんな目に遭うの? 私はなにか恨まれるようなことをしたの?

教えてよ……悪いことをしたなら謝って、改めるから。


しばらく嗚咽を零し続けていたけど、玄関に入る生徒が増えて、慌てて涙を手の甲で拭う。それでも涙は止まらない。

私は諦めてボロボロと頬を伝う涙をそのままにした。

持参したハンドタオルでスライムを取り除き、上履きと一緒にゴミ箱に捨てる。

職員室でスリッパを借りようと、ようやく歩みを始めた。

泣き顔を見られないように俯いて。
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