再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
嫌がらせはこれだけで終わらなかった。

体操服を破かれたり、教科書に落書きをされたこともあった。

これは器物破損罪で、立派な犯罪だ。

だけど、警察に被害届を出して大事になるのは避けたかった。

担任の先生に相談する気もない。

あの先生は気が弱いけれど、「逃げたら負けだ。笑顔で耐えろ」と根性論を持ち出す。

そんな人に相談したって、親身に聞いてくれそうにない。

何より、私の学校での扱いを家族に知られたくない。



どうか、飽きてくれますように……。

切実に祈るけれど。

そんな私を嘲笑うように嫌なことは立て続けに起きてしまうんだ。




六月に入り、梅雨が始まった。

私は放課後、学校から近い大きな書店に立ち寄っていた。

大好きな作家さんの新作が発売されるからだ。

その作家さんは、十代から二十代の女子向けの小説投稿サイトで作品を投稿している。

どれも甘めの胸きゅんするストーリーで、ハッピーエンドの作風は絶大な人気を誇っている。

人気の少女漫画家による表紙や挿絵があると知って、尚更楽しみだった。


目当ての小説はライトノベルのコーナーに平積みしてあった。

表紙は頬を染めている可愛い系の美少女がかっこいい男子に後ろから抱き締められている美麗なイラストで飾られている。

素敵……! 早く帰って部屋でゆっくり読もうっと。

私はそれを一冊手に取り、軽やかな足取りでレジへ向かった。
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