再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
仮の恋人関係

あ……まただ……。


いつか諦めてくれると信じ、言い聞かせてきた。


寝起きがあまり良くないなか、開かない瞼を擦って目を覚ます。

眠気でふらふらとしながら私は真っ先に玄関を出た。

そこにあるポストを祈るような気持ちで開ける……。

ポストの中を覗いた私は力なく項垂れた。

今日もあった……。

そこに、笹山響様と書かれた一通の封筒が入っていたから。



実は六月に入ってから何者かに後をつけられるようになった。

私の自意識過剰か被害妄想と思っていたけど、三日後の学校からの帰り道。

一度だけ見知らぬ人は私を追いかけてすれ違いざまに囁いた。


「いつも見ているよ」

「……っ!」


低く不気味な声音だった。

それは地声ではなくアプリで加工した不自然なものだった。


もし、私に勇気があって強い人間だったらひっ捕らえて警察に通報していただろう。

だけど、現実の私は立ち尽くし、小さく震えながら怯えるしか出来なかった。

その人はあっという間にいなくなっていた。



そんな私を嘲笑うように、翌日から毎日私宛に手紙が届くようになった。

中身はパソコンで打って印字された文章が綴られた便箋と、盗撮された私の写真が入っていた。


文章は私をいかに愛しているか、美しいか? を賛美する内容だった。

毎回同封される写真は全て目線が合っていない。

中には小学六年生の頃の初詣に行った時の写真があった。

長いこと私に執着をしていたんだ……。

その事実は私を恐怖のどん底へ突き落とした。


五通目以降の手紙から封を切ることを辞めた。よく四通も読めたと思う。
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