再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
その言葉は私の幻聴かと思った。

向けられることの無いと思っていただけに耳を疑っている私がいた。


「つ、付き合う!?」


私の口から情けない上擦った声が洩れた。

思いを寄せている人から言われたのだ。

冗談から出たものだとしても、狼狽えずにはいられなかった。

高校生の私だけど、まだ彼氏がいたことがない。

中学まで女子校育ちな上に、高校では爪弾きされているせいでご縁がなかった。

嫌がらせや孤立がなくても、元から私に構う人なんていたことはなかったけどね……。


「あくまでも振りだよ。仲のいいところを見せつけたら、ストーカーも諦めるんじゃないかな」

「それで、上手く行くんでしょうか……」

「やってみる価値はあると思う」


北川さんを見たら、「敵わない」と諦めてくれるかもしれない。

でも、振りとはいえ付き合うなんて、私にはハードルが高いよ……っ。

私はおろおろと視線をさ迷わせていたけど、藁をも掴む思いで決心した。


「お願いします……」


私は北川さんの提案を受け入れ、ストーカー対策の為に仮の彼氏彼女となった。


「不自然に思われないように苗字呼びは辞めよう」


それは、名前で呼び合うってこと……?

北川さんを、ゆ、ゆ、ゆ……。

脳内で試みただけでもキャパオーバーになり、バグが発生してしまった。

わ、私にはとても、無理ですっ!
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