再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
異性の名前を呼んだことは、幼稚園の頃以降はない。

共学の高校に通う今は苗字にくん付けだけど、孤立しているから呼びかける機会はない。

男友達の一人や二人でもいれば違っていたのかな。

それほど、名前を呼ぶ行為は私にとってハードルが高いものだった。


「あの、私、慣れてなくて……」


待ってください、まだ無理です、と言わんばかりに見つめる。


「ストーカーに諦めて欲しいでしょう?」


北川さんは、そんなたじろぐ私を諭していく。

……確かに諦めて欲しい。

名前を呼ぶのは、あくまでもストーカーに仲の良さを見せつける手段だ。

至極もっともな意見だ。


「ううっ……そ、そうですね」


北川さんは女の子の名前を呼ぶことなんて慣れているんだろうな。

これまで何人の彼女と付き合ってきたんだろう。


「出来そう?」

「頑張ります……」


うぅ、もう……なるようになれ……!

私はなりゆきに任せて、北川さんの要求にゆっくりと頷いた。


「いい子だね────響」

「っ、」


鼓膜に伝わる私の名前を紡ぐ声は、やたら甘くて。

心臓を壊しにかかる威力があった……。
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