再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
「なんで笹山さんなの!? 見た目だけじゃん」

「騙されて可哀想ー!」


名前の知らない女子の陰口が聞こえてしまった。


学校の人間から見たら、悠くんは私に騙されて手玉に取られている哀れな青年に映っていることだろう。

おまけに最近の噂上の私は、パパ活を始めたらしい。

知らないおじさんとご飯を食べたり、デート? をして金品を貰う行為らしい。

もちろんそれは全くのデタラメだ。

悠くんに聞こえていないといいけど……。


「帰ろうか」

「うん」


一緒に肩を並べて帰ろうとしたけど。


「響、この前教えたでしょ?」


悠くんが耳元で囁いた。


「あ……そうだった……」


ぎゅっとリュックサックの肩紐を握りしめていた手を離し、躊躇いがちに悠くんの指を絡ませた。

付き合った振りを始めた時から登下校は、一緒に手を繋いでいる。

誰かと付き合った経験がないと正直に打ち明けた結果、悠くんから色々と教わっている。

中学の頃は周りに彼氏持ちの子はいなかったし、中学三年から今までぼっちだった。

それゆえ、恋愛関係の話題は人より疎い自覚があった。


「彼氏彼女は、こうやって手を繋ぐんだね……」

「そうだよ。腕を組むカップルもいるよ」

「う、腕……?」


それって、かなり密着するよね……?

私達はあくまで振りだから先に進むことはない。

だけど、しなきゃいけない時が来たら、私の心臓は持つのかな。
< 46 / 182 >

この作品をシェア

pagetop