再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
辿り着いた先は、大通りから外れた人っけのない細い路地裏だった。

私は、彼女達になにか恨まれるようなことをした記憶はない、はず……。

金に近い明るい髪を靡かせる彼女は


「あんたのせいでアタシ振られたんだけど! どう責任取ってくれるの!?」

「人の彼氏を誑かすなんてどういう神経してるの?」


誑かした記憶はないです。

だって、あなたの彼氏と話したことも無ければ顔も知らないんだから。


「誑かした? 私はその人を知りません」


誤解に違いない、話せば分かるよ。

詳しく聞かせてください。

なるべく彼女を刺激しないように穏便に答え、尋ねるつもりだったけど。


「しらばっくれるなよ!」


どう答えても導火線に火がついてしまったみたい。

激昂した彼女に思い切り頬をぶたれていた。

鮮やかに彩られた長い爪が頬に引っかかって痛みが走っている。


「あー傷付いちゃった!」

「もっとやっちゃえって!」


彼女のお友達だろう二人は囃し立てるように大声をあげている。

彼女は私の胸倉を掴み、背後にあるフェンスに思い切り押し付けた。

殺意に似た憎しみを込めた眼差しを向けられて、ぞくりと背すじが凍るのを感じた。

手先が少し震えている。

そして、彼女は右手を思い切り振り上げた。

あ、殴られる……っ!

私は瞼を閉ざすことなく、これから来る痛みを覚悟した。
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