再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません

通った鼻筋、形のよい薄い桜色の唇。


綺麗な二重まぶたのアーモンド形の瞳は、澄み切った琥珀色をしている。

日に焼けていない白い肌は羨ましいくらい滑らかだ。

柔らかそうな栗色の髪をなびかせて佇むと、まるで絵に描いた王子様のようだ。


……こんな奇麗な人、見たことがない。


あたしは定期入れを差し出したまま固まっていた。


その人は一言も声を発することなく、あたしを見つめていた。

まさか、人違い!?

いきなり知らない人に、ましてや小学生に声を掛けられて怪しんでいるのかもしれない!


「あの、違いましたか……?」


おどおどとした話し方なってしまった。

ごめんなさい。お父さん以外の男の人とほとんど話したことはないから、緊張してしまっていたの。

だんだん気まずい気持ちになって、顔を俯かせてしまった。


「ああ、ありがとう。俺の定期だよ」


そんなあたしの頭上に届いたのは、物腰柔らかな声音だった。

彼はあたしの手にある定期入れを受け取ってくれた。

耳に届いた程よく低く甘さがるその声がなぜか離れず、胸がきゅうっと苦しくなった。

これはなに?

あたしは経験したことのない感覚に内心戸惑っていた。

なにはともあれ定期入れは、無事に持ち主の手に渡った。

そのことに安堵したあたしは、俯いた顔をゆっくりと上げた。


「よかった」


安心のあまり自然と笑みが零れていた。



その時、ちょうど急行がホームに停まった。

あたしは「失礼します」と言って一礼をすると、その電車に乗り込んだ。



その日からあたしの頭の中から、彼の顔が離れてくれなくなっていった────
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