再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
頬に走る痛みはいつまで経ってもくることはなかった。
彼女の背後から、背の高い男の人が振り下ろそうとした右手を掴んでいたから。
「痛い! 痛いいいーっ!」
ううん、掴んだというか捻り上げているが正しいかもしれない。
金髪の女の子は痛そうに眉をひそめて金切り声のような悲鳴を上げている。
私は目の前で繰り広げられている光景を飲み込むことが出来ず、呆然となっていた。
男の人はすぐに掴んだ腕を離した。
「強く掴んでごめんね。この子、俺の親戚なんだよ。だからこういう真似は辞めて欲しいな」
柔和な声音で謝る彼に、三人の女の子達はぼーっと見とれていた。
私も同じ状態になっていた。
だって……私は彼を知っている。
栗色の柔らかそうなショートヘア、私と彼女達に向けている大きなアーモンド形の双眸は澄んだ琥珀色。
王子様みたいに稀なほど整った甘めの顔立ちも、物腰柔らかな声も、ずっと前から忘れることなく覚えている。
……これは夢ですか?
「ごめんなさーい。私らちょっと喧嘩しただけなんですー」
彼女達は先程とは打って変わって笑顔で腰を低くしながらその場から去って行った。
彼女達が居なくなって、彼と二人きりになった時、私の体は脱力してへなへなと座り込んでしまった。
この体の震えは先程の恐怖からだろうか。
彼と遭遇したことによる緊張から来るものだろうか。
とりあえず、お礼を言わなきゃ。
「ありがとう、ございました……」
震えた情けない声だった。目がじーんと熱くなっている。
頬を伝ったのは、涙が汗か、私には判別が付かなかった。