再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
十月の最後の日曜日がやって来た。
文化祭の日が近づきつつある、つかの間の休息日、あたしは由加とお出かけしていた。
昼前から映画を見たり、服や雑貨屋を見て回る。
幼稚園の頃からの付き合いがある由加は、一番仲のいい子だ。
午後四時に差しかかる頃。
喉が乾いたので、以前食べた和栗のモンブランを売っている洋菓子店を目指していたけど、今日は運悪く臨時休業だった。
がっくしと肩を落としたあたし達は、そこから近いファミレスを見つけて、そこで休憩をすることに。
メニューを見れば、秋限定のモンブランが載っていたので、それをドリンクバーを注文した。
「あそこにいるの、環お姉さまじゃない?」
由加がメニュー表で顔を隠しながらあたしに声をひそめる。
窓際に近いテーブル席に、環お姉さまが真剣な顔で何かを見つめていた。
「挨拶しに行こうよ」
「そうだね」
あたしは由加の提案に乗り、一緒に環お姉さまの元へ向かった。
「こんにちは!」
あたしと由加は声を揃えて環お姉さまに挨拶をすると、テーブルに置かれていた間違い探しに夢中だった環お姉さまが気付いた。
「こんにちは、由加ちゃん、響ちゃん」
真剣な顔つきが、愛らしい笑顔に変わった。
「奇遇ですね。彼氏さんとデートですか?」
「そうだよ。本当は先週だったけど、私の都合で今日になったの」
由加の問いに満面の笑みで答える環お姉さまは、彼氏さんと会えたのか幸せそうだ。
「いいですねっ。文化祭は来るんですか?」
「うん、来るよ。招待状郵送で渡したからね」
ふふ、羨ましい。
あたしと由加は、しばらく環お姉さまと談笑していた。
「……彼氏さん戻ってきたよ。戻ろうよ響」
ふと、由加があたしの袖を引っ張る。
あたしは誘われるように由加の視線を辿った。
その先にいたのは────
うそでしょ……?
ミルクティーが入ったグラスを持つ北川さんだった。