再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
「立てそう?」


そう言われて立ち上がろうとするけれど、足に力が入らず立ち上がることが出来なかった。

そんな私に彼は手差しのべた。

私は緊張しながら手を伸ばし、彼の手を握った。

とても大きな手。

あの頃と変わらない……。

私は当時のことを思い出してしまい、高鳴る鼓動を自覚した。


「すみません……」

「結構血が出てる。痕が残るといけないから今から病院に行こう」

「あの……」


頬に伝っていたのは涙や汗でもなく血だったんだ……。

思っていたより引っ掻き傷は酷かったみたい。

女の子の爪は結構鋭かったなぁ……でも、お洒落だったなぁ。

私の爪なんて、お菓子作りをするから常に短くてなにも塗られていない。

……女子力が低いや。

そうやってあさっての方向な思考をしていると、彼にぐいっと手を引かれていた。

まだ繋がれている!?

繋がれたままの手に、私の脳内は混乱していた。

大丈夫だと振りほどこうとしてもしっかり繋がれていて、病院に辿り着くまでその手が離れることはなかった。

彼の後ろ姿を見ていると、身長の高さに驚かされる。

私も平均より高めだというのに私より十五センチくらいは高そうだ。



駆け込んだ午後の病院で、診察と手当を受けた。

頬の傷は痕が残ることはないだろうと診断された。

万が一残れば形成外科を紹介してくれると言ってくれた。
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