再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
「いや……突然なに?」

「あたし、見かけたんだ。この前、悠が黒髪のショートボブの凄い美少女と一緒にいるところ。邪魔になりそうだったから声はかけなかったけどね」
 
指先から体温が奪われる感覚に襲われる。

貧血気味のようにくらくらと目眩を覚えた。
 
私を家に送ってから夜に会っていたのかな。同じ大学の人とか?
 
髪型は私と被っているけど、凄い美少女という表現から別人に違いないと思った。
 

「今は違うけど……彼女になって欲しいなとは思うよ」
 

悠くんの言葉は私の心のかさぶたを剥がし、傷みを与えていく。

好きな人、いたんだ……。

四年前を思い出す。

由加と立ち寄ったファミレスで見かけた、悠くんと環お姉さまが一緒にいるところを。

 
「良かったね。やっと新しい恋出来るようになったんだ」

「あの頃は瑞穂に沢山心配かけたね……もう環のことは思い出に出来たよ。今はあの子が好きだよ」


しばらく環お姉さまのこと引きずっていたんだ……。
 

私が中学二年の秋頃、悠くんと環お姉さまが環お姉さまの家の事情で別れた。

……と風の噂で耳にしたことがあった。

好きなのに別れなければいけない。

想像しか出来ないけど、辛く、苦しく、胸が傷むんだろうな……。
 
そんな悠くんが未練を断ち切って好きになった相手はどんな女性なんだろう。

私は胸の傷みを払拭するように残りのかき氷を食べ進めていく。

しかし、先程は美味しく感じたかき氷の味が今では分からなくなっていた。
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