再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません


「悠は告白しないの?」

「……いつかはするつもり」
 

悠くんなら相手が誰だろうがオッケー貰えるよ。
 
私だけが格好よく見える特殊なフィルターがかかっている訳じゃなく、他の人から見ても悠くんは非常に端整な容姿だ。

一緒に歩いていると、通りすがりの異性の熱い視線が悠くんに集中しているところを幾度も目の当たりしたものだ。


「それなら、高校の近くの神社の縁日に誘ったら?」


従姉妹さんが悠くんに提案をした。

お父さんから聞いたことがある……悠くんの母校である菖蒲高校の近くの神社で毎年八月の上旬に縁日が行われる。

確か、打ち上げ花火もやっていたよね。
 
お父さんは若い頃、おばあちゃんの跡を継ぐ前に教師をしていた。

縁日の見回りに駆り出されたことがあり、縁日の話を私にしてくれた。


「ああ、彼処(あそこ)の?」

「移動するのは大変だけど、境内は見晴らしがいいから、絶好のスポットじゃないかなぁ」

「イベントに便乗してみるのも悪くないね。誘ってみるよ」

「あ、今年は台風の接近で日付変わってるから」

「分かったよ」
 

好きな人への告白を前向きに検討してる悠くんに、私の心が密かにへし折られた。
 
ああ、もう限界だ……。

私は悠くんに気付かれないように静かに立ち上がり、会計をしにレジ前まで向かった。

足元が覚束なくて転びそうになったけど、転ばずに済んだ。
 
涙目になっている顔を、レジを打つ男性の店員さんに見られてしまった。

けど、私の頭の中は悠くんのことでいっぱいでそれどころじゃなかった。
 
かき氷を食べ終えた後は書店や雑貨屋を見て回る予定だったけど、別の機会にして真っ直ぐ帰宅した。
< 73 / 182 >

この作品をシェア

pagetop