再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません

用事があるだの、実家へ帰るだのといった断り文句を予想していた。

てっきり断られるものと思っていたから、悠くんの返事に耳を疑ってしまった。

 
(好きな子を誘うんだよね? どうして私の誘いに乗るの……?)
 

悠くんにとって自分は、ただの知り合いか良く言って友人でしかないと認識している。

それでも、親身になって彼氏の振りをしてでもストーカーから守ってくれた。

きっと、悠くんは相手を優先してしまう性質なんだ。
 
一緒に縁日に行ける嬉しさより、悠くんに無理をさせてしまった罪悪感が勝り、私の心を占めていった。

 
「……っ、ありがとう」

 
邪魔して、ごめんなさい……。
 

悠くんが私の声の震えに気付かないようにと祈った。

 
「当日、響の家まで迎えに行くね」

「お願いします。私、眠くなっちゃったからそろそろ……」

「おやすみ、響」

「おやすみなさいっ」


通話が終わった。

私って最低にも程がある!

自分の弱さのせいで、悠くんの邪魔をしてしまった……!

自己嫌悪のあまり、唇を噛み締めていた。
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