再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません

台風が過ぎてから数日後の八月十二日。

いよいよ、縁日の日を迎えてしまった。



姿見に映るのは、白地に藍色の矢絣(やがすり)模様の浴衣を着付けた自分の姿だった。

ヘアアレンジとメイクは柴田さんがやってくれた。

似合っているかな……。

ううん……好きでもない子の格好なんてどうでもいいかもしれない。

「お嬢様、いつも以上にお美しいですよ」なんて柴田さんは言ってくれたけど、それでも不安は拭えない。

鏡に映る自分の深い青色の瞳は緊張と不安が入り交じっていた。

悠くんが待っているのに、怖気付いている私は玄関から出ることが出来ずにいた。


「あまり待たせてはいけませんよ」


そんなわたしに痺れを切らした柴田さんは、重厚な玄関のドアを開けた。

すごい笑顔の柴田さんは、時折ドSなお姉さんの顔を覗かせる。


「い、いってきます……っ」


ドアを開けられたら出るしかないよっ!


「いってらっしゃいませ」


私は清水の舞台から飛び降りる勢いで、家から出て行った。


門に近付くと、悠くんの姿が目に入った。

私は慣れない下駄で歩みを早め、悠くんの元へ向かったのだった。


「こんばんは」


悠くんを前にすると頬は自然と緩んでしまう。

悠くん、浴衣着ているの……っ。

紺色の落ち着いた浴衣は、とても似合っている。

以前した想像上の和装と同じくらい……いや、それ以上に格好良すぎて、目が離せなかった。

そんな破壊力のある悠くんは、目を細めては私に甘く笑いかけた。


「その浴衣、よく似合っているよ。髪型も可愛い」
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