再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
その時、後ろから手首を掴まれて引っ張られた。
強引に振り向かされて私は前方へ倒れていく。
転んでしまうと思い、痛みを覚悟したけれど、砂利が敷かれた地面とぶつかることなかった。
体に伝わる温もりと鼓動、肩と背中に回る腕。
「え……なんで……?」
私は、悠くんに抱きしめられていた。
どうしてこうなっているのか、状況を呑み込めずにいる。
悠くんが私を抱きしめる理由がないから。
そんな戸惑いを隠せずにいる私に、悠くんは耳元で囁いた。
「俺の好きな子は響だよ」
その声は蜂蜜やシロップに匹敵する甘さのある声だった。その声を聞くと胸がきゅうっと切なさに似た痺れを感じてしまう。
「わ、わたし……?」
悠くんが私を好きだなんて、同じ気持ちだなんて、そんなの都合のいい幻聴か、白昼夢の類としか思えなかった。
「でも、従姉妹さんが言ってた悠くんと一緒にいたって女の子は……」
「間違いなく響のことだから」
きっぱりと答えた悠くんに、私は目を見張り、おろおろとうろたえてしまう。
「どうして、私なの? 分からないよ、分からないよ」
「一緒にいる内に、響の健気なところや純粋な一面に癒されて強く惹かれたんだ」
悠くんは私を解放させ、両手を私の肩に置いた。
触れるだけで体が溶けてしまいそうになる。
射抜くように向けられる琥珀色の双眸は、真剣で熱を孕んでいる。
まるで囚われたようにその眼差しから逃げられない。
ううん、私は初めて悠くんに出会った頃から、囚われていたの。
「俺の本当の彼女になってくれませんか?」
これが夢なら……もう二度と目覚めなくていい。